日本頭痛学会

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片頭痛患者の頭痛を認めない日における機能性に対するFremanezumabの影響

VanderPluym J, et al. Fremanezumab for preventive treatment of migraine. Functional status in headache-free days. Neurology 2018. pii: 10.1212/01.wnl.0000544321.19316.40. doi: 10.1212/01.wnl.0000544321.19316.40.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景・目的】

 片頭痛は純粋な発作性疼痛疾患というよりは慢性神経性疾患と考えられており、発作間欠期においても神経系の異常が存在する。 FremanezumabはCGRPに対する抗体であり、発作性片頭痛 (以下EM)および慢性片頭痛患者 (以下CM)の発作予防効果が大規模臨床試験で実証されている。 本研究では、同薬のEMおよびCMに対する第II相試験に参加した被験者を対象に、頭痛を認めない日における仕事、学業、家事を行う上での機能性が評価されている。

【方法・結果】

 EM患者の対象者は、225 mg投与群96名、675 mg投与群97名、プラセボ投与群104名で、CM患者の対象者は、675 mg→225 mg (675/225 mg)投与群88名、900 mg投与群86名、プラセボ投与群89名であった。 電子ダイアリーを用いて、仕事、学業、家事を行う能力や機能性についての質問に対して、正常、50%未満の障害度、50%以上の障害度の3段階で回答を得た。さらに、作業への集中度、精神的疲労度についても質問を行った。 評価期間は3ヵ月間とした。EM患者では、頭痛を認めず、かつ仕事、学業、家事が正常に行える日数のベースラインからの上昇度は投与1ヵ月から3ヵ月のすべての時点においてプラセボ群に比較していずれのFremanezumab投与群でも有意に多かった。 また、作業に時間がいつもより時間がかかる、集中困難である、とても疲れる、眠い、あるいは疲れ果てているといったような症状を訴えることがない日数についてもプラセボ群に比較してFremanezumab投与群で有意に多かった。 CM患者では、900 mg投与群においてはEM患者と同じようにプラセボ群に比較して有意差が認められた。 しかし、675/225 mg投与群では、家事が正常に行える頭痛のない日数と集中力困難なことが全くない日数に関してのみプラセボ群と有意差が確認された。 一方、仕事、学業、家事を行う上で50%以上の障害度がある、あるいは集中困難を認める頭痛のない日数についてはわずかではあるがベースラインから上昇しており、プラセボ群に比較して上昇の程度が高かった。

【結論・解釈】

  本研究は、EMとCM患者の頭痛を認めない日における作業能力を改善させる作用がFremanezumabにあることを実証した。同薬に関しては、プラセボに比較して、頭痛を認める日数や片頭痛を認める日数の減少効果や安全性に関して優越していることは既に報告されていたが、今回の結果は発作間欠期おけるパフォーマンスの改善にも寄与することを明らかにしたと言える。 しかし、そのような効果は、EMに対しては一貫していたが、CM症例では675/225 mg投与群では不十分であったことから、CM症例では頭痛を認めない日であっても、作業を行う上での機能性を保つことが困難であることが浮き彫りとなった。 これまでの片頭痛予防薬は、頭痛には効果を発揮しても、副作用のために発作間欠期に仕事や学業に悪影響を及ぼすといったことがしばしば問題となった。Fremanezumabなどの抗体薬は中枢神経系にほぼ移行することがないため、そのような悪影響が少ないのではないかと推測されるが、この点を明確にするには、より多くの症例の解析や長期の観察が必要と思われる。 また、発作間欠期における効果は、単に発作回数を減らしたことの反映なのか、あるいは中枢神経系の機能を持続的に変えることで起きているのか?という疑問も重要である。 後者については、抗体は一般にBBBを通過しないものの、三叉神経血管系の神経伝達をブロックすることが、中枢神経機能を変化させる可能性も考えられている。