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抗CGRP抗体は三叉神経脊髄路核ニューロンにどのような影響を与えるのか?

Melo-Carrillo A, et al. Selective inhibition of trigeminovascular neurons by Fremanezumab: A humanized monoclonal anti-CGRP antibody. J Neurosci 2017;37:7149-7163.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景・目的】

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide: CGRP)は片頭痛の病態に重要な働きをしており、最近ではCGRP受容体拮抗薬に加えてCGRPあるいはCGRP受容体に対する抗体が片頭痛に対して薬効を示すことが注目を浴びている。 CGRPは三叉神経節ニューロンに発現しているが、その中枢測神経終末は三叉神経脊髄路核に存在する。 CGRPが神経伝達物質として作用することで、二次ニューロンである三叉神経脊髄路核ニューロンが興奮してシグナルはさらに視床や大脳皮質へと伝達される。 本研究では、抗CGRP抗体Framanezumab (TEV-48125)が定常状態および皮質拡延性抑制 (cortical spreading depression: CSD)発生後の三叉神経脊髄路核ニューロンの活動に与える影響を電気生理学的に解析している。

【方法・結果】

  Sprague-Dawleyラットの硬膜を露出後、人工髄液で灌流した。 タングステン微小電極を三叉神経脊髄路へ刺入し、硬膜、顔面皮膚、角膜への物理的刺激の両方に反応するニューロンを個別に同定した。 刺激には、von Frey hair (VFH)モノフィラメント、絵筆、動脈クリップを用いた。 モノフィラメントや絵筆を軽く当てて引き起こした無痛性刺激やクリップのピンチングによる有痛性刺激を加えて各ニューロンの電気活動を測定した。 その結果、圧迫、ブラッシング、ピンチングなどの刺激に対して強度に応じて反応性を増す広作動域 (WDR)ニューロンとクリップによるピンチング刺激に対してのみ反応する高閾値 (HT)ニューロンが別個に存在することが確認された。 CSDは脳表へのガラス微小ピペット刺入によって誘発し、抗CGRP抗体Fremanezumab (30 mg/kg)は経静脈的に投与された。 31個のWDRニューロンと32個のHTニューロンについて測定が行われた。 31個のWDRニューロンの中で18個 (雄11、雌7)は抗CGRP抗体投与前後に、13個 (雄7、雌6)は対照抗体前後に評価された。 32個のHTニューロンの中で18個 (雄11、雌7)は抗CGRP抗体投与前後に、14個 (雄8、雌6)は対照免疫グロブリン前後に評価された。 抗CGRP抗体は雄においてのみ定常状態のHTニューロンの電気活動を抑制したが、WDRニューロンではそのような抑制は認められなかった。 抗CGRP抗体は、硬膜圧迫刺激による電気活動については雌雄共に抑制したが、顔面や角膜のブラッシングやピンチングによる刺激で誘発されるニューロンの電気活動には明らかな影響は与えなかった。 CSDによってHTおよびWDRニューロンでは2および6時間後には電気活動の亢進が確認された。 それに対して、抗CGRP抗体投与ラットではHTニューロンにおいてのみ電気活動亢進抑制が観察され、対照抗体ではそのような抑制は確認されなかった。 また、CSDによって硬膜刺激に対する受容野の拡大が観察されたが、これも抗CGRP抗体によって抑制された。

【結論・コメント】

  抗CGRP抗体が硬膜に反応するHTニューロンの活動を選択的に抑制することを初めて動物実験で実証した研究である。 機能的な面から考えると、WDRニューロンは侵害性および非侵害性刺激の両者に反応し受容野が広く、HTニューロンはピンチングなどの侵害性刺激にしか反応せず受容野の狭いという差異があるため、HTニューロンは部位識別性の高い侵害性刺激由来のシグナルの伝達に関与すると推測されている。 実際の片頭痛の痛みはどのようなシグナル伝達を経て発現しているかは不明であるが、本研究のような抗CGRP抗体の選択的な作用ではブロックしきれない場合もある可能性がある。 本研究の結果には解釈が困難なデータも多い。 何故雄でのみ定常状態のHTニューロンの電気活動がブロックされるのか、顔面や角膜の刺激によって生じる電気活動はなぜブロックされないのか (一次ニューロンには同じようにCGRPが発現しているはずである)といった疑問を解決するにはさらなる研究が必要であろう。