日本頭痛学会

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片頭痛発作とアロディニアの間に生じているドパミン受容体D2/D3機能の変化

DaSilva AF, et al. Dopamine D2/D3 imbalance during migraine attack and allodynia in vivo. Neurology 2017;88:1-8. 10.1212/WNL.0000000000003861

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景・目的】

 世界的に片頭痛有病率は14.7%であり、片頭痛発作とアロディニアに起因する生活障害度は全疾患の中で7番目にランクされていることからも、片頭痛は重要な疾患である。 最近の研究により、片頭痛患者の脳に認められる機能的および構造的変化は識別性感覚機能に関与する部位にとどまらず非常に広範な部位及ぶことが明らかとなった。線条体にも変化が認められるが、興味深いことに、片頭痛患者においてはParkinson病やレストレスレッグス症候群といったドパミン異常が関与する疾患の有病率が高いことが指摘されている。 本研究では、片頭痛発作時の脳内ドパミン機能異常を熱アロディニア誘発による付加的な影響を含めてPETを用いて解析している。

【方法】

 ICHD-3betaによって診断された片頭痛患者8名 (うち前兆のある片頭痛患者5名)と性別と年齢を合わせた健常対照者を対象とした。 参加登録した患者と電話で連絡をとり、自然発生の片頭痛発作中に来院してもらい、D2およびD3受容体占有率を評価できる[11C]racroprideを使用したPETを施行した。 PET検査はまず安静状態でスキャンされた。さらに発作中に頭痛発生側の顔面に温度可変プローブを当て、32℃から1℃/秒の速さで温度上昇させて対象者の自覚症状から熱疼痛閾値を決定した。 その後、その温度での持続性熱刺激負荷を行い熱アロディニアを誘発した状態でのスキャンも行った (持続性熱疼痛閾値温度負荷試験: STPT challenge)。 [11C]racroprideは、D2/D3に結合するリガンドであるが、内因性ドパミン放出が低下すると非遊離性受容体結合能 (nondisplaceable binding potential: BPND)は上昇する。 したがって、[11C]racropride BPNDは内因性D2/D3受容体の結合可能量を反映する指標と考えられる。 [11C]racropride BPNDの測定はボクセル・レベル (voxel level)とクラスター・レベル (cluster level)の両者で評価した。 本研究の対象となった片頭痛患者の平均年齢は27 ± 6.45歳で、月の平均発作回数は5.75 ± 3.45回であった。一方、健常対照者の平均年齢は26 ± 7.17歳であった。 片頭痛発作発生からPET開始時間までの間隔時間は平均9時間34分であった。発作間欠期の片頭痛患者と健常対照者を比較したところ、[11C]racropride BPNDに有意な群間差は認められなかった。しかし、片頭痛患者群では、安静状態PET検査のボクセル・レベル、クラスター・レベルのいずれの解析においても発作中の[11C]racropride BPNDは間欠期に比較して有意に増加していた。頭痛と対側の被殻における[11C]racropride BPNDは間欠期に比較して有意に増加しており (ボクセル・レベルp < 0.001、クラスター・レベルp = 0.01)、頭痛と同側の被殻と尾状核でも[11C]racropride BPND上昇が確認された (ボクセル・レベルp = 0.001、クラスター・レベルp = 0.003)。 また、発作時と間欠期での[11C]racropride BPNDの変化は片頭痛の病期と正の相関性を示していた (p = 0.047)。 STPT challenge時のPET検査では、発作中の[11C]racropride BPNDは間欠期に比較して有意に増加していた。 頭痛対側の被殻と尾状核では発作間欠期に比較して有意に増加し (ボクセル・レベルp < 0.001、クラスター・レベルp = 0.004)、同側島皮質でも発作中に有意な上昇が確認された。 発作時[11C]racropride BPNDは、間欠期に比較してボクセル・レベルにおいて18%の上昇が頭痛対側の被殻あるいは尾状核で認められ、20%の増加が同側島皮質でそれぞれ認められた。 なお、STPT challengeによる頭痛対側での[11C]racropride BPND変化量は月あたりの頭痛頻度と負の相関性を示していた。 一方、片頭痛患者において安静状態とSPTP challenge時の[11C]racropride BPNDの差を解析したところ、頭痛と同側の島皮質においてSPTP challengeによって27%の急速な低下が観察された。 同様の低下現象は、健常対照者の尾状核においてSPTP challengeを行った際にも認められた。

【結論・コメント】

 片頭痛患者では片頭痛発作時と発作時のアロディニア発生によって[11C]racropride取り込みの減少と変動が生じていることが明らかとなった 。本所見から、片頭痛患者において発作時の内因性ドパミン放出は低下しており、顔面への熱アロディニア誘発によって、ドパミン放出が促進されることが示唆された。 さらに、病期が長くなり、発作再発間隔が長くなるのに比例して、発作時の内因性ドパミン放出量は低下していることが推察された。 片頭痛発作時の線条体および島皮質のドパミン機能異常をほぼリアルタイムで実証した初めての報告であるため非常に貴重といえる。 しかし、そのようなドパミン機能異常が片頭痛発作時の症状にどのような影響を与えているのか、病態にどのような関与があるのかは全く不明である。 今後、これらの問題点を明らかにしていくべきであろう。