日本頭痛学会

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群発頭痛の症状や発作発生時間の性差に関する研究

Lund N, et al. Chronobiology differs between men and women with cluster headache, clinical phenotype does not. Neurology 2017;88:1069-1076.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景・目的】

 群発頭痛 (CH)は、発作が夜間に起こりやすいといったように生体時計との密接な関連性を有すると考えられており、頻度の性差がはっきりしている特徴がある。 また、有病率は1000人に1名程度と片頭痛に比較すると低く、正確な診断を受けるまでに長い時間を要することが指摘されている。 診断の遅れの原因として、女性での診断の遅れや臨床症候の性差が関与している可能性が懸念される。 しかしながら、このような点に関する詳細な疫学調査はこれまでのところ施行されていないのが現状である。

【方法・結果】

 デンマーク頭痛センター (Danish Headache Center)にすでに登録されているCH患者とウェブサイトやニュースレターでリクルートされた18~65歳の患者を対象とした。 CHの診断は国際頭痛分類第2版の診断基準が使用された。対象者には7つのセクションに分類された362の質問からなる質問票を配布した。 また、Pittsburgh Sleep Quality Index (PSQI)を用いて睡眠の質についての調査も併せて行った。質問票の回答は549名中の351名から得られ、その比率は男性67%、女性33%であった。 全体の発症年齢は平均31.6歳であった。慢性CHの比率は男性で35.9%、女性で44.0%と女性で有意に高かった (p < 0.05)。 発症年齢に関しては、反復性CH患者では年齢が上がるにつれて低下する傾向が明らかであったが、発症年齢に有意な性差は認められなかった。 日内変動などの時間生物学的側面に関しては、全体のデータを解析すると発作発生の日内ピークは4つあることが確認されたが、ピーク時間出現のタイミングが男性では女性より約1時間早いことが明らかとなった (p < 0.05)。 一方、就寝時間には男女間で有意差はなかった (ただし調査の前月に発作を認めた患者のみを解析すると女性患者では就寝から入眠までの時間が男性に比較して有意に長く、PSQIスコアも高かった)。年内の発作のピークのリズム形成に関しては、54.7%が存在すると回答した。 群発期や増悪期は、男女共に秋の終わりから冬の始めの間に存在し、6月は最も発作が少なかった。 また、日照時間と発作の増悪の間に有意な相関性が男女共に確認された。 男性患者では、慢性CH患者の35.3%が、発作性CH患者では64.0%が特定の時期に発作が増悪すると回答した。 この傾向は女性患者でも同様であった。 一方、1日当たりの発作回数、平均頭痛強度、頭痛発作時間 (治療の有無に関わらず)に関しては男女間で明らかな差を認めなかった。しかし、女性では群発期の回数が男性に比較して有意に多く (p < 0.05)、群発期の長さは短い傾向を示した。 音過敏や光過敏といった片頭痛様の症状は男女間で差はなく、これは片頭痛の合併に影響を受けていなかった。 女性患者では、慢性CH患者で反復性CH患者に比較して1日当たりの発作回数が有意に多かった (4.83 vs. 3.58, p < 0.05)。 一方、男性患者では、慢性CH患者では反復性CH患者に比較して、発作時間が長く (50.2分 vs. 31.7分, p < 0.01)、瞼裂狭小を認める率が高かった (61.3% vs. 38.7%, p < 0.01)。 また、CHと診断される前に、片頭痛などと誤診される例は全体で約半数認められた。 女性の方が男性に比較して誤診される率が高かったが (61.1% vs. 45.5%, p < 0.01)、誤診のほとんどは一次および二次医療機関で発生していた。 患者全体で正確な診断を得るまでに発症から6.2年を要していたが、男女間で診断に至るまでの期間に有意差は認められなかった。 また、今回の調査では女性CH患者の20.7%に片頭痛の共存が確認された。

【結論・コメント】

 今回の研究によって女性CH患者は男性に比較して誤診されてしまう可能性が高い実情が浮き彫りとなった。 本研究では慢性CH患者の男女比は1.8:1と他の研究に比較して女性患者の率が高かったが、慢性CH患者が初期の段階でしばしば慢性片頭痛と誤診されていたことも指摘している。 男性の発作が女性に比較して約1時間早く発生することは、群発頭痛に関連した生物時計形成に関与する視床下部機能に性差が存在することを示唆している。 なお、視床下部機能に精査があることはよく知られている (Swaab DF, et al. Neurobiol Aging 2003;24:S1-S16.)。 また、性差はなかったものの慢性CH患者でも季節による症状の変動性が確認されたことも新しい知見であると述べられている。