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CGRPによる片頭痛様光過敏の誘発には末梢性と中枢性の別個の機構が存在する

Mason BN, et al. Induction of migraine-like photophobic behavior in mice by both peripheral and central CGRP mechanisms. J Neurosci 2017;37:204-216.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景・目的】

 カルシトニン遺伝子関連ぺプチド (calcitonin gene-related peptide: CGRP)は片頭痛の病態に重要な役割を果たしていると考えられている。 CGRPの静注によって片頭痛発作が遅発性に誘発されることが知られているが、CGRPは血液脳関門 (BBB)を透過しないと考えられているため、末梢における作用が片頭痛発作誘発に重要である可能性が高い。 さらに、BBBをほとんど透過しないCGRPあるいはCGRP受容体に対する抗体が片頭痛発作予防に有効であることが明らかとなっていることも、末梢における作用点の重要性を示唆している。 しかし、CGRPとその受容体は中枢にも存在するため、CGRPの中枢作用の片頭痛病態における役割にも関心がもたれている。 本研究では、マウスに対するCGRPの末梢あるいは中枢投与が、光過敏をどのように誘発するかを比較検討している。

【方法・結果】

 CD1およびC57BL/6JマウスにCGRPを腹腔内あるいは脳室内注射を行って、末梢性作用と中枢性作用をそれぞれ検討した。 光過敏の程度は、55ルクスと27000ルクスの異なった明度に分割できる実験箱にマウスを入れて、明所で過ごす時間や赤外線による行動パターン (歩行距離・後退り行動・2つのコンパートメント間の移行など)定量解析を行うことで評価した。 また、Cre-loxシステムを用いて神経系にのみヒトのCGRP受容体を形成するRAMP1遺伝子を過剰発現する遺伝子改変マウスであるnestin/hRAMP1マウスも使用された。 腹腔内へのCGRP投与 (0.1 mg/kg, 0.5 mg/kg)によって、有意な光過敏が誘導されたが、その程度はCD1マウスで顕著であった。 55ルクスにおける行動パターンを詳しく解析すると、CGRP投与によって安静時間延長、後退り行動減少、歩行距離減少が非投与群に比較して有意差をもって認められた。 コンパートメント間の移行もCGRP投与によって抑制された。これらの行動パターンの変化もCD1マウスでより顕著であった。 一般にマウスは実験箱の中心にいるよりも、隅にいることを好む傾向があり、不安があるとその傾向が顕著となる。 そこで実験箱全体の明るさを27000ルクスにして行動観察したが、CGRP投与は被験マウスが中心部にいる時間を変化させなかったため、CGRP投与は不安を増強させたわけではないことが確認された。 一方、C57BL/6Jマウスに脳室内CGRP投与を行って中枢のCGRP受容体を刺激しても光過敏は誘発された。 スマトリプタンおよびCGRP抗体の投与により、腹腔内CGRP投与によって誘発された光過敏は軽減された。 この際に、スマトリプタンはCGRPと同時投与を行ったが、抗体に関しては1回目のCGRP (あるいはVehicle)腹腔内投与を行った後に抗体投与を行い、その後に2回目のCGRP (あるいはVehicle)腹腔内投与を行うという方法がとられた。 1回目のCGRP投与で光過敏が認められるのを確認した後に、2回目では抗体の前投与による抑制効果が現れているかが評価されている。 一方、nestin/hRAMP1マウスを用いた実験は55ルクスと暗所に分割した条件下で行われた。CGRP脳室内投与によって光過敏が観察された。 しかし、腹腔内投与では光過敏は観察されなかった。 この条件下でCGRP腹腔内投与に反応しなかったnestin/hRAMP1マウスも27000ルクスでCGRP腹腔内投与の反応を観察すると野生型マウスと同様の光過敏性を示した。

【結論・コメント】

 本研究の結果は、CGRPによる光過敏は末梢と中枢両方の機序があることが判明した。 また、マウスの系統によって異なることは、ヒトで考えると光過敏誘発に人種差が存在することを示唆する。 Nestin/hRAMP1マウスが腹腔内投与と脳室内投与でCGRPによる光過敏誘発に相違を示したことは、機序に差があることを示唆している。 しかし、その詳細は全く不明であり、今後の研究の発展が望まれる。 また、本研究ではCGRP腹腔内投与による光過敏がスマトリプタンで抑制された。 従来の考え方では、トリプタンはCGRPの放出を抑制して抗片頭痛効果を示すというものであるが、今回の所見はCGRPの下流でスマトリプタンが効くということを示唆している。 追試が必要と思われるが、本研究は新しい知見を提供していると評価できる。