日本頭痛学会

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片頭痛患者の31日間にわたるfunctional MRI所見の連日記録

Schulte LH, et al. The migraine generator revisited: continuous scanning of the migraine cycle over 30 days and three spontaneous attacks. Brain 2016;139:1987-1993.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景・目的】

 functional MRI (fMRI)やPETを用いた研究によって、橋背側部に片頭痛発生器 (migraine generator)が存在する可能性が指摘されている。 しかし、これには異論も唱えられており、最近では視床下部で片頭痛予兆時に活性化が確認されたことから、片頭痛発生器は視床下部に存在するのではないかという考えも提示されている。 予兆時の欠伸や食行動変化などの症状は視床下部異常に起因する症状と解釈可能であり、片頭痛発作の周期性も視床下部の体内時計が形成している可能性も考えられる。 片頭痛は発作性疾患であるため、時宜を得た検査の施行が困難である。 本研究は1名の片頭痛患者に31日間 (その間に3回の片頭痛発作が発生した)にわたり毎朝fMRIを施行しえた貴重な観察研究である。

【方法・結果】

  月に2~3回規則的に発作を呈する女性の前兆のない片頭痛患者を対象とした。 原則的にfMRIを施行する12時間前以降は急性期治療薬を可能であれば使用しないように指示したところ、患者自身が片頭痛発作時に急性期治療を一切使用しないことを自発的に決心し、その通り実行された。 観察期間中に1~2日続くVASで5~7に相当する片頭痛発作が観察された。 fMRIの検査では、患者の左鼻孔に挿入したカテーテルからアンモニアガスを吸入させて侵害性刺激を三叉神経に加えた際の脳各部位の活性化状態、チェッカーボード提示による視覚刺激による脳各部位での活性化状態が検討された。 非発作時に比較して発作時には侵害性刺激が引き起こす苦痛の程度が増加しており、視覚刺激で誘発される不快の程度も亢進していた。 刺激後のfMRIでの活性化状況に関しては、頭痛発作開始前の24時間以内に得られたスキャンでは、発作間欠期のスキャンに比較して頭痛同側の視床下部と両側視覚野 (Brodmann 17~19野)で有意な活性化亢進が確認された。 また、発作時には発作間欠期に比較して有意な橋背側部での活性化が観察された。 一方で、発作時には視覚野は発作間欠期に比較して刺激による活性化は抑制されていた。 また、右三叉神経脊髄路核、橋中部、視床下部、視覚野 (Brodmann 18および19野)では次の片頭痛発作が近づくにしたがって刺激による活性化程度の上昇が観察された。 発作後には、発作時に比較して痛覚刺激後の活性化が視覚野 (Brodmann 17および18野)で低下していた。 視床下部では、発作前の数日間は発作間欠期と比較して、視覚刺激時の機能的結合性に関して三叉神経脊髄路核とのカップリングが亢進していた。 しかし、発作を認めた日には、視床下部は背側吻側橋とのカップリングが有意に亢進していた。 発作後と発作間欠期を比較すると、視床下部と三叉神経脊髄路尾側との機能的結合性は前者で有意に亢進していた。

【結論・コメント】

 発作の開始に先行して視床下部活性化が認められ、かつ三叉神経脊髄路核との機能的結合性が増強していたことから、同部位に片頭痛発生器が存在する可能性が支持された。 一方、橋背側は発作中に痛覚シグナル伝達の修飾を行っていることが推測された。 また、片頭痛患者の中枢神経系では、痛覚および視覚刺激の統合が次の発作に向かって進展し、発作時にその統合が解除されるといったような周期的変化が生じている可能性が指摘された。