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難治性後頭神経痛に対する頸髄神経後根切断術の長期成績

Gande AV, et al. Long-term outcomes of intradural cervical dorsal root rhizotomy for refractory occipital neuralgia. J Neurosurg 2015; DOI: 10.3171/2015.6.JNS142772.

 

【目的】
 後頭神経痛(ON)は、大後頭神経と小後頭神経が分布する後頭部領域の片側性あるいは両側性の慢性疼痛であり、そのほとんどはNSAIDsや三環系抗うつ薬などの薬物治療、温熱療法やマッサージなどの物理療法、ステロイドや局所麻酔薬の局所注射などにより改善する。一方、これらの治療に反応しない難治性の後頭神経痛に対しては、外科的治療が考慮されることもあり、その一つに頸髄神経後根切断術(CDR)がある。しかしながら、後頭神経痛に対するCDRの長期成績を含めた効果に関する報告は不十分である。
 本論文では、14年間にわたる治療経験をもとに、薬物治療抵抗性の患者におけるCDRの鎮痛・機能的効果について検討している。

 

【方法】
 1998年1月から2012年12月までに米国ピッツバーグ大学メディカルセンターで、上位頸髄(C1-4)に対してCDRが施行された後頭神経痛75例が選択され、そのうち国際頭痛分類の診断基準を満たし(障害神経の局所麻酔薬によるブロックで一時的に改善することが全例で確認されている)、術後少なくとも1回以上の再診が確認された55例が対象となった。また、術後に電話アンケートを行い、治療満足度に関しても調査した。
 42例(76%)が女性で、手術時の平均年令は46歳(16-80歳)であった。術後の平均フォローアップ期間は67ヵ月(5-150ヵ月)で、後頭神経痛の病因の内訳は、特発性44%、外傷後27%、術後22%、脳血管障害後4%、ヘルペス感染後2%、細菌感染後2%であった。

 

【結果】
 CDR施行後、後頭神経痛は35例(64%)で完全消失、11例(20%)で部分消失、9例(16%)で変化なしであった。CDR後の鎮痛効果は、後頭神経痛の病因には影響されなかった(p=0.43)。また、不安障害や抑うつなどの精神疾患の有無や片頭痛や他の疼痛疾患の併存の有無もCDRの治療効果には影響していなかった。
 55例中37例で電話アンケートにより治療満足度調査の結果が得られたが、25例(68%)で同様の痛みに対して同じ手術を受けたいとの希望があった一方、11例(30%)では希望がなく、1例(2%)で分からないとの回答が得られた。22例(59%)で術後に生活の質が改善し、12例(32%)で変化なし、3例(8%)で悪化していた。
 術後合併症は急性期に9例(16%)、慢性期に12例(22%)が確認された。急性期合併症で多かったものは感染が5例(9%)、髄液漏出が3例(5%)、慢性期合併症では、後頸部の痛みや張りが8例(14.5%)、僧帽筋の筋力低下や肩の痛み、感覚障害などの上肢の症状が8例(14.5%)であった。

 

【結論・コメント】
 CDRは、薬物治療抵抗性の後頭神経痛患者において鎮痛効果のある有効な治療である。適切な患者選択により、低侵襲で効果のある治療となりうると考えられた。
 本報告では、CDR少なくとも84%で痛みの改善が見られている。特発性後頭神経痛では、他の病因に比べ疼痛完全消失率が71%と最も高い。非侵襲的な治療では十分な効果が得られず、患者のQOLが著しく損なわれている場合には、適応になる可能性が十分あると考えられた。しかしながらCDRは切断術とは言え、永続的な効果が得られないこともあり、本論文では術後12ヶ月の時点で3例(5%)が再発している。また、重症ではないが慢性期合併症の発生率が30.9%と高い点も注目すべきである。

 

文責:松森保彦(仙台頭痛脳神経クリニック)