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抗CGRP受容体抗体AMG 334による片頭痛予防効果と安全性

Sun H, et al. Safety and efficacy of AMG 334 for prevention of episodic migraine: a randomized, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial. Lancet Neurol 2016. http://dx.doi.org/10.1016/S1474-4422(16)00019-3

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】
 新規の片頭痛予防療法としてCGRP (calcitonin gene-related peptide)を標的にした抗体治療が考えられており、すでに3種類の抗CGRP抗体の片頭痛予防効果が第II相臨床試験で実証されている。最も一般的なCGRP受容体は、RAMP1 (receptor activity-modifying protein 1) とCLR (calcitonin-like receptor)から構成されるGタンパク質共役型受容体である。AMG 334はこのCGRP受容体に対するヒトIgG2モノクローナル抗体であり、解離平衡定数20 pMを示し、極めて高い結合力を有することが確認されている。本抗体の第I相臨床試験では、皮下注投与量として280 mgまでは安全性が実証されている。本論文では、北米とヨーロッパで行われたAMG 334の第2相臨床試験における薬効と安全性に関するデータが報告されている。

 

【方法・結果】
 本研究は北米とヨーロッパの59施設が参加した国際的な臨床研究として組織された。研究は、最長で3週間のスクリーニング期間の後に、4週間のベースライン測定期間、12週間のランダム化二重盲検による治療期間、さらに最長256週間までのオープンラベルでの延長試験から構成されていた。対象は、18~60歳の最低1年以上の病歴を有する反復性片頭痛患者であり、スクリーニング前の3ヶ月間において月に4~14日の片頭痛を認める日数を示し、かつ2ヶ月間は予防療法を受けていない者とした。頭痛の記録は電子ダイアリーで施行された。対象者は、プラセボ群およびAMG 334の7 mg, 21 mg, 70 mgの4群に3:2:2:2の割合でランダムに割付けられた。試験薬は4週間に1回皮下注射された。薬効に関する主要評価項目はランダム化二重盲検治療期間の9~12週における片頭痛を認めた日数のベースラインからの変化量とした。本研究の片頭痛の定義は、前兆のあるなしに関わらず、30分以上の持続時間を呈し、一側性・拍動性・中等度以上・動作による増悪といった特徴の中から2つ以上の項目を満たし、悪心・嘔吐・光および音過敏の中から1項目以上を満たす頭痛とした。「片頭痛を認めた日」の定義は、患者がそのような片頭痛の発症、持続、あるいは再発を認めた暦日とした。また、トリプタンあるいはエルゴタミン製剤を服用した日は、前兆のみであったり頭痛の持続時間や特徴が満たされなかったりしても「片頭痛を認めた日」に含められた。薬効に関する二次評価項目は50%レスポンダー率とした。それ以外に、MIDAS・HIT-6・Migraine-Specific Questionnaireなども評価された。本研究は2013年6月18日に開始され、同年8月6日に二重盲検期間が開始された。967人がスクリーニングの対象となったが、最終的に483人がランダム化割付の対象となった。そして、二重盲検治療期間を完了できたのは、その中の448名 (プラセボ群143名、7 mg群105名、21 mg群99名、70 mg群101名)であった。主要評価項目に関して、プラセボ群と有意な群間有意差が認められたのは、70 mg群であった (最小二乗平均 70 mg群-3.4日、プラセボ群-2.3日; 差分-1.1日 [95%信頼区間-2.1~-0.2], p = 0.021)。また、週ごとに解析を行ったところ、両群間の差はすでに2週間目で有意となっていた (最小二乗平均 70 mg群-0.8日、プラセボ群-0.3日; 差分-0.5日 [95%信頼区間-0.8~-0.1], p = 0.008)。二次評価項目の50%レスポンダー率は、70 mg群で46/99 (46%)、プラセボ群で43/144 (30%)であり、オッズ比では2.0 (95%信頼区間 1.2~3.4, p = 0.011)と有意差が認められた。QOLに関しては、MIDASなどで評価すると70 mg投与群で改善傾向は認められたが、プラセボ群と比較して統計学的有意差には至らなかった。安全性に関しては、有害事象発生にAMG 334投与群とプラセボ群に有差は認められなかった。AMG 334に対する抗体産生は、約10%の症例で認められたが、その中で中和抗体活性を示したのは3%程度であった。

 

【結論】
 AMG 334は70 mg/4週間の皮下注によって片頭痛予防効果が確認された。また、安全性に関しても大きな問題がないことも確認された。したがって、CGRPそのものに対する抗体同様、CGRP受容体抗体も有効な片頭痛予防治療薬と考えられる。CGRP受容体の存在は、末梢のみならず中枢神経系にも確認されているが、抗体は障害を受けていない血液脳関門を容易には通過しないため、AMG 334の作用は主として末梢において発揮されていると考えられる。また、CGRPは強力な血管拡張物質であるが、定常状態の血管トーヌス形成には関与していないため、理論上CGRP阻害は血管収縮作用が問題ならないことが予想されていたが、本研究の結果はこの予想を裏付けたといえる。三叉神経血管系にはAMY1受容体と呼ばれる上記のものとは異なるCGRP受容体が存在することが最近報告された。AMG 334はAMY1受容体の阻害作用がないと報告されている (Shi L, et al. J Pharmacol Exp Ther 2016;356:223-231.)。もし、AMY1受容体が片頭痛発生に大きな役割を果たしている場合には、AMG 334の抗片頭痛効果は不十分となってしまうことも懸念されるが、この問題に関しては今後さらなる検討が必用であろう。なお、AMG 334に関しては、慢性片頭痛や薬剤の使用過多による頭痛に対する効果も検討中である (NCT02066415)。