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TEV-48125の慢性片頭痛の予防効果

Bigal ME, et al. Safety, tolerability, and efficacy of TEV-48125 for preventive treatment of chronic migraine: a multi-centre, randomized, double-blind, placebo-controlled, phase 2b study. Lancet Neurol 2015

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【目的・背景】
カルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide: CGRP)は、中枢神経および末梢神経C線維およびAδ線維に存在するペプチドである。神経終末から放出されると血管拡張や炎症を引き起こし、中枢神経では疼痛シグナル伝達の調節に関与していると考えられている。CGRPは三叉神経一次ニューロンに存在し、CGRP拮抗薬が抗片頭痛効果を示したことから、片頭痛の病態に深く関与していると考えられている。慢性片頭痛とは1ヶ月の中で15日以上に頭痛が認められ、そのうち8日以上で片頭痛が存在する病態と定義されているが、非常に生活支障度が高く、かつ治療困難であることが知られている。CGRPあるいはCGRP受容体に対する抗体が片頭痛予防に有効であることは既に実証されているが、慢性片頭痛に対する効果は現時点では確認されていない。本研究は、ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体TEV-48125の慢性片頭痛に対する効果を評価した第2b相試験である。

 

【方法・結果】
2014年の1~8月に米国62施設で第2b相試験として行われたプラセボ対照ランダム化二重盲検研究である。264名のICHD-3の慢性片頭痛診断基準を満たした患者が対象で、2種類までの予防薬 (ボツリヌス毒素は除く)投与は許容された。対象者は28日の治療期間を3サイクル経験したが、次の3群にランダムに割付けられた。すなわち、①プラセボ群、②675/225 mg群 (1サイクル目は675 mg、2および3サイクル目は225 mg投与)、③900 mg群 (3サイクル共に900 mg投与)の3群が設定された。治療効果の一次評価項目は、治療3サイクル目 (9~12週)における頭痛を認めた時間数のベースラインからの変化および安全性と忍容性とした。二次評価項目としては、同期間における中等度~重度の頭痛の回数のベースラインからの変化と設定した。各群の治療3サイクル目 (9~12週)における頭痛を認めた時間数のベースラインからの変化であるが、プラセボ群で-37.10時間 (標準偏差79.44時間)に対して、675/225 mg群で-59.84時間 (80.38時間)、900 mg群で-67.51時間 (79.37時間)であり、最小二乗平均差を取るとプラセボ群と675/225 mgとの差は-22.74時間 (95%信頼区間: -44.28~-1.21時間, p=0.0386)で、プラセボ群と900 mg群との差は-30.41時間 (95%信頼区間: -51.88~-8.95時間, p=0.0057)であった。また、中等度~重度の頭痛の回数のベースラインからの変化に関しても有意な改善効果を示し、1サイクル目に既に有意差が認められた。有害事象の発生は各群認められたが、投与量との相関性はなく、投与局所の痛みや掻痒感が最多であった。

 

【結論・コメント】
本研究によって抗CGRP抗体が慢性片頭痛症例に有効であり、かつ安全生にも大きな懸念がないことが初めて示された。慢性片頭痛患者は通常のepisodicな片頭痛症例に比較して血液中のCGRP濃度が高いと指摘する研究もあり (Cernuda-Morollon E, et al. Neurology 2013;81:1191-1196.)、本研究の結果はCGRPが慢性片頭痛の病態で重要な働きをしていることを裏付けている。また、TEV-48125は中和抗体の出現率が1%未満と他の抗体に製剤に比較して低いことも今回の研究で明らかにされた。これは、長期投与を行う上で、非常に有利な特性と考えられる。今回の結果から、TEV-48125を用いた第III相試験の試験を行うことの妥当性が支持されたといえる。