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妊娠女性における急性頭痛の診断

Robbins MS, et al. Acute headache diagnosis in pregnant women. A hospital-based study. Neurology 2015;85:1-7.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】
片頭痛が合併した妊婦の数は多く、妊娠に際して片頭痛の病状は変化を示すことが多い。一方、妊娠時に急性頭痛が発生した場合には、過凝固状態を基盤にした静脈洞血栓症など、診断が難しく、治療が遅れると予後不良となる器質的疾患の可能性も考慮する必要がある。妊娠時の急性頭痛の診断はしばしば困難で、診断のアルゴリズムも確立していないのが現状である。本研究では、妊娠時に生じた急性頭痛症例を後方視的に検討し、妊娠時の頭痛を呈する患者の特徴や危険因子などを解析している。

 

【方法・結果】
米国のMontefiore医療センターで2009年7月1日~2014年6月30日まで、産科から神経内科に依頼のあった妊娠中の急性頭痛症例の診療録を解析対象とした。症例数は140例で平均年齢は29.4 ± 6.4 (平均 ± 標準偏差)であった。人種別では、黒人が39.3%でヒスパニック系が36.4%を占めた。また、初産婦は15.0%であった。 78.6%は頭痛の既往があり、30.7%は神経学的異常が確認され、87.9%の症例で画像検査が施行されていた。なお、59.3%が前兆のない片頭痛の、11.4%の症例が前兆のある片頭痛の既往をそれぞれ有していた。全症例の中で65.0%が一次性頭痛で、35.0%が二次性頭痛であった。全体の59.3%が片頭痛症例であり、その中の24.3%が前兆のある片頭痛であった。二次性頭痛の原因疾患としては、妊娠に伴う高血圧によって引き起こされた頭痛が最も多く、全体の17.9%を占めた。その内訳については、前子癇、PRES、子癇、HELLP (hemolysis with elevated liver enzymes and low platelet counts)の順に多かった。それ以外には、下垂体腺腫/下垂体卒中が3.6%で、感染症と気脳症が2.1%ずつ、脳静脈血栓症と頭蓋内出血が1.4%ずつであった。可逆性脳血管攣縮症候群 (RCVS)は0.7%であった。なお、頭痛が発生した時期は妊娠第三期が最も多く (56.4%)、特に二次性頭痛でその傾向が顕著であった。片頭痛症例では、以前の発作に比較して持続時間が長く (44.5%)、前兆を伴ったり (40.0%)、重症度が増したりする (30.0%)傾向が認められた。前兆を認めた症例のうち、69.4%では以前に前兆の既往はなかった。全症例を検討すると、頭痛発作は90.0%が重症であり、72時間を超えるものが45.7%を占め、40.0%で片側優位で、拍動性が45.4%に認められた。また、二次性頭痛に有意に関連した因子としては、血圧上昇と一次性頭痛の既往が存在しないことであった。その他、痙攣・発熱・神経学的検査での異常所見は二次性頭痛を示唆する症候であることも確認された。一方、精神疾患の共存と光過敏が一次性頭痛と最も関連する因子であった。

 

【結論・コメント】
今回の研究で、妊婦における急性頭痛の約1/3に二次性頭痛が存在したことは、画像検査を含めた精査が重要であることを再確認したといえる。一次性頭痛の既往のない症例、血圧上昇・痙攣・発熱・神経学的異常が認められた場合は特に注意が必要と思われる。一方、片頭痛症例に関しては、重症化し、前兆を初めて経験する患者が多いことが明らかとなった。さらに、一般に妊娠時期が進むと片頭痛発作は軽快や消失を示すと考えられているが、今回の検討では、片頭痛発作が妊娠第三期に最も多く認められた点は興味深いと思われる。