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群発頭痛に対する経皮的迷走神経刺激療法の効果

Nesbitt AD, et al. Initial use of a novel noninvasive vagus nerve stimulator for cluster headache treatment. Neurology 2015;84:1249-1253.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景・目的】
群発頭痛は一側性の激しい頭痛と同側の自律神経症状を主徴とする疾患である。群発頭痛の予防療法は確立しているとは言い難く、特に慢性群発頭痛の治療には困難を伴うことが多い。難治性の慢性群発頭痛症例には深部脳刺激 (deep brain stimulation: DBS)が施行されることもあるが、侵襲性が高く、脳出血などの重篤な合併症が報告されている。埋め込み型の迷走神経刺激装置は、てんかん治療に利用されているが、群発頭痛にも効果を示すことが偶然発見された (Mauskop A, et al. Cephalalgia 2005;25:82-86.)。本研究では、ポータブルの経皮的迷走神経刺激装置gammaCoreの群発頭痛に対する効果をオープンラベル方式で検討している。

 

【方法・結果】
米国2施設 (三次頭痛治療センター)に通院する発作性および慢性群発頭痛患者を対象とした。研究期間は2012年の1~12月であった。当初25名の患者がエントリーされたが、診断が不明確である、手技が適切に行えないなどの理由からドロップアウトが生じ、最終的に19名 (男性11名、女性8名、年齢13~84歳、慢性群発頭痛11名、反復性群発頭痛8名)の患者が解析対象となった。慢性群発頭痛患者の中の7名は複数の予防薬に抵抗性であり、難治症例と考えられた。迷走神経刺激は、発作時に120秒間の間欠的電気刺激を頭痛と同側に行った。また、予防療法として、午前と午後に連日2回の刺激を定期的に施行されている。15名の患者が本治療は予防療法として有効であると回答し、残り4名は病状変化が認められなかったと回答した。改善の程度としては、全体で48 ± 9%であった。また、慢性群発頭痛の中の5症例では、治療開始26週後と52週後で改善の程度に有意な変化を認めず、効果の持続性が示唆された。導入前の急性期治療に与えた影響しては、gammaCore治療開始によって、2名の酸素療法を用いている患者と1名のスマトリプタン皮下注治療を行っていた患者において、それらの治療法が完全に不要となり、gammaCoreのみの治療で十分となった。その他の14名の酸素使用患者においても、使用量は平均で55%減少した。一方、3名で使用量が不変、1名では使用量が増加した。スマトリプタン皮下注療法を用いていた残りの患者のうち、3名では完全に同治療が不要になり、酸素吸入を週1回以下の使用で十分となり、9名ではスマトリプタン使用量が48%減少した。発作頻度は、全症例で解析すると4.5回/24時間から2.6回/24時間へと有意に低下した。なお、gammaCoreに関して明らかな有害事象は報告されなかった。

 

【結論・コメント】
gammaCoreは、非侵襲的で忍容性が高く、かつ有効な群発頭痛治療法である可能性が示された。エントリー症例に、難治性の慢性群発頭痛症例が含まれていたにもかかわらず、良好な成績が得られたことも特筆すべき点といえる。本治療法の固有の性質から、盲検化試験を行うのは極めて困難であるため、効果が客観的に評価されていないという欠点は指摘できる。また、頭痛疾患では、特にデバイスや注射を用いた治療に対して、プラセボ効果が強く出る傾向も指摘されている。しかし、前述のように、難治症例に対する治療成績は、プラセボ効果のみでは説明できないレベルであると筆者らは述べている。