日本頭痛学会

HOME << 医師・医療従事者の方へ << 頭痛研究のトピックス

理事長挨拶
topics&information
ニュースレター
学会概要・組織
入会案内
頭痛学会誌
頭痛ガイドライン
国際頭痛分類
医師・医療従事者の方へ
会員専用ページ
一般の方へ
研修医・医学生へ
Link
サイトマップ
群発頭痛患者へのステロイド投与が外頸静脈血CGRP濃度とメラトニン分泌に与える影響

Neeb L, et al. Corticosteroids alter CGRP and melatonin release in cluster headache episodes. Cephalalgia 2014. pii: 0333102414539057.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】
群発頭痛では、機能画像所見から視床下部異常が指摘されている。特に、群発頭痛発作は特有の概日リズムや季節性変動を示すため、視床下部の視交叉上核 (suprachiasmatic nucleus: SCN)に存在する体内時計の異常がその病態に深く関与すると考えられている。SCNには松果体からのメラトニン分泌を調節する機能があるが、群発頭痛患者ではメラトニン分泌パターンの異常が以前に報告されている。一方、群発頭痛の予防治療にステロイドが用いられているが、その作用機序はいまだ明らかでない。本研究では、群発頭痛発作期において、メラトニン分泌と三叉神経活性化の指標となる外頸静脈血カルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide: CGRP)濃度にステロイド投与がどのような影響を与えるかを検討している。

 

【方法・結果】

2008年10月~2009年5月にベルリンのCharité大学医学部病院の三次頭痛センターを受診したICHD-2の反復性群発頭痛の診断基準を満たした患者の中で、最近の発作の開始から14日未満しか経過しておらず、1日1回以上の発作回数を有する者を対象とした。ステロイドの投与方法としては、3日連続でメチルプレドニゾロン1000mgを静脈注射し、その後3日間プレドニゾロン80mgを経口投与して、2日毎に20mg減量して漸減中止とした。また、プレドニゾロンの減量開始に合わせてベラパミル開始して、420mg/日まで1週間かけて増量し、その後維持した。対照群としては、同量のステロイドパルス療法を受けた多発性硬化症患者を設定した。ステロイドパルス療法開始前日をDay1 (D1)として、D1, 4, 14, 21および寛解期に入った時期に外頸静脈血中のCGRPを測定した。一方、メラトニン分泌は、昼間帯と夜間帯に尿中に排泄されたメラトニンの安定な代謝産物である6-sulfatoxymelatonin (aMT6s)を定量することで評価し、D1-2, D4-5, D13-14, D20-21および寛解期に測定した。22名の群発頭痛患者がスクリーニング対象となり、そのうちの10名が研究対象となったが、1名は研究途中でフォローアップ不能となった。また、対照群となった多発性硬化症患者は当初スクリーニング対象となった25名中の6名であった。上記の治療によって、対象となった群発頭痛患者の発作頻度は低下した。外頸静脈中CGRP濃度は、ベースラインの21.81 ± 4.61 pg/ml (数値は今後も含めてmean ± SD)からステロイド投与後に、D4で15.8±3.08 pg/ml (p=0.007)、D14で15.42 ± 2.86 pg/ml (p = 0.002)へといずれも有意に低下した。また、寛解期におけるCGRP濃度は、発作期のステロイド投与前のベースライン値に比較して有意に低値であった (14.43 ± 3.11 pg/ml, P = 0.031。対照群との比較に関しては、ベースライン値に有意差はなかったが、多発性硬化症患者ではステロイド投与によるCGRP濃度の有意な変動を認めなかったため、ステロイドパルス治療直後、経口プレドニゾロン投与時、寛解期のいずれの値とも群発頭痛患者の方が有意に低値を示した。群発頭痛患者の夜間帯尿中aMT6s濃度はベースライン値が5.96 ± 1.62 g/12hであったが、ステロイドパルス療法後に7.42 ± 1.98 g/12hへと有意に (p = 0.046)上昇した。D14でもベースライン値に比較して有意に高値であった (10.33 ± 2.56 g/12h, p = 0.012)。また、昼間帯のaMT6s濃度は夜間帯に比較して低値であった。また、夜間帯尿中aMT6s濃度のベースライン値は対照群に比較して群発頭痛患者で有意に低値であった (5.96 ± 1.62 g/12h vs. 15.96 ± 3.44 g/12h, p = 0.005)。ステロイドパルス終了直後も、群発頭痛患者では対照群に比較して有意に低値であったが (7.41 ± 1.98 g/12h vs. 14.62 ± 8.65 g/12h, p = 0.038)、経口プレドニゾロン投与後には有意差は認められなくなった。

 

【結論】

群発頭痛発作期には、三叉神経血管系が活性化されていること、メラトニン分泌が低下していることが確認された。また、群発頭痛発作に対するステロイドの効果は、三叉神経血管系活性化の抑制とメラトニン分泌異常の是正を介して生じている可能性が示唆された。

 

【コメント】

これまで群発頭痛に対するステロイド効果は抗炎症作用を介するのではないかとするデータもあったが、本研究はステロイドの作用機序に関して新たな知見を提供したと言える。群発頭痛にメラトニン投与が有効という報告もあるため、メラトニン受容体作動薬の群発頭痛治療への応用も今後期待したい。