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前庭性片頭痛患者における視床機能異常

Russo A, et al. Abnormal thalamic function in patients with vestibular migraine. Neurology 2014;82:2120-2126.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】
前庭性片頭痛 (vestibular migraine)はICHD-3βで初めて導入された病名で、付録に収載されている。片頭痛発作に5分~72時間持続する前庭症状が随伴する疾患であり、有病率が1%に達する頻度の高い重要な病型という認識がある一方で、病態に関してはデータが乏しいのが現状である。本研究では、前庭性片頭痛患者と前兆のない片頭痛患者 (MoA)と健常者の3群で前庭神経刺激を行った際に脳に生じるfunctional MRI (fMRI)のBOLD信号の変化を計測している。

 

【方法・結果】

ナポリ大学で施行された研究で、ICHD-3βの診断基準を満たす前庭性片頭痛とMoAの連続15症例と健常コントロールを対象とした。しかし、研究施行中に片頭痛発作が起きた症例とアーチファクトによって明瞭な画像データが得られなかった症例は除外されたため、前庭性片頭痛とMoA患者はそれぞれ12名ずつ解析された。患者群と健常コントロール群共に男性5名と女性7名であり、年齢に有意差は認めなかった。MRIのベースライン撮影の完了60秒後に被験者の左外耳道に5 mlの4℃の冷水を注入し1.5秒間の冷刺激によりカロリック試験を行った。刺激300秒後に2回目のスキャンを行った。その後、注水なしで同様の2回のスキャンを行った (コントロールスキャン)。カロリック試験によって、全ての被験者で回ったり、傾斜するような異常感覚が引き起こされたが頭痛の発生はなかった。また、両側島皮質 (左<右)・右頭頂皮質・右視床・脳幹 (中脳中心灰白質を含む)・小脳で有意なBOLD信号の活性化が認められた。ただし、MoA患者では右頭頂皮質の変化は明らかでなかった。一方、前庭性片頭痛とMoA患者では、左前帯状皮質において有意なBOLD信号の低下が確認された。左視床の背内側核 (mediodorsal nucleus)では、前庭性片頭痛患者におけるBOLD信号の変化は、MoAおよび健常コントロールに比較して有意に強かった。さらに、前庭片頭痛患者におけるBOLD信号変化の程度と発作回数との間に正の相関が確認された。

 

【結論】

前庭性片頭痛患者において、前庭神経刺激後の視床機能の変化が本研究によって初めて確認されたことから、同疾患の病態に視床における前庭性シグナルのプロセシングの異常が関与することが推測された。

 

【本研究に対するコメント】

片頭痛発作時における視床の役割としては、感作の成立や痛覚シグナルと視覚シグナルの統合による光過敏の発生などが知られているが、症候と脳機能との相関性の観点から背内側核が前庭性片頭痛でどのような役割を果たしているのかについての解析が今後望まれる。