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薬物治療抵抗性の慢性群発頭痛に対する視床下部刺激療法の長期予後

Leone M, et al. Success, failure, and putative mechanisms in hypothalamic stimulation for drug-resistant chronic cluster headache. Pain 2013;154:89-94.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】
慢性群発頭痛は重度の疼痛を呈し患者のQOLが大きく阻害されるが、一部の症例では薬物による予防療法に反応しない症例が存在する。群発頭痛患者ではPETで視床下部の後下部灰白質に活性化部位が確認されており、MRIのvoxel-based morphomertyによって同部位に灰白質細胞密度の異常も報告されていることから、視床下部に対する高頻度刺激による治療が施行されている。本論文では、平均約9年間におよぶ同治療の長期予後が報告されている。

 

【方法】

ICHD-IIの慢性群発頭痛の診断基準を満たす19名 (男性15名・女性4名,)を対象とした。平均罹病期間は3年で1日の発作回数は5~8回であった。また、対象となった患者はベラパミル・炭酸リチウム・バルプロ酸をはじめとする各種予防薬には不応であった。2症例は発症当初から慢性群発頭痛であったが、それ以外の症例は発作性群発頭痛からの移行例であった。MRIによる座標設定後に、疼痛側の視床下部に電極を挿入した。術後に2日連続で発作が認められた時点で180 Hz・60 sの電気パルス刺激が開始された。

 

【結果】

術後の平均経過観察期間は8.7年 (6~12年)で、平均刺激強度は2.8V (1.0~4.6V)であった。全症例を検討すると、治療効果が認められたのは電極をオンにしてから2~5週後であった。1名の患者は、治療によって頭痛は消失したがレジオネラ肺炎と敗血症のため死亡した。他の1名の患者では電極の感染によって術後1ヵ月後に電極が抜去された。残りの17名のうち6名で術後に群発頭痛がほぼ消失した (3ヵ月に1回未満)。これらの症例では、術後平均6.4年刺激をオンにした後に、平均3年刺激をオフにしていた。他の6名の患者では、群発頭痛発作は連日性ではなくなったが、2~5ヵ月の群発期の後に5~10ヵ月以上の寛解期が認められるようになった。2006年においては、6名中3例が頭痛を認めておらず、2名で著明改善が認められていた。なお、視床下部刺激による治療効果が認められた上記12名の患者のうち7名で予防薬が投与されていた。一方、対象者の中で5名において術後も連日性の発作が残存していた。そのうち2名では術後一時的に (1~2年間)明らかな症状改善が認められたが、耐性が生じて症状が再出現した。一方、他の2名では全く治療効果が認められなかった。改善効果の乏しい5例中4例は両側性の群発頭痛であった。重度な有害事象としては、局所感染・脳室内出血・痙攣発作などが観察された。また、数例で電極挿入位置の調整が必要となったり、電極迷入が認められた。最も頻度の高い有害事象は、一過性の回転性めまいと複視であった。

 

【結論】

本研究の結果からは、視床下部刺激療法は薬物療法抵抗性の慢性群発頭痛症例の約70%に有効であることが示されたため、有望なセカンドラインの治療法として位置づけられると考えられる。視床下部刺激は効果を示すのに数週を要することから、疼痛シグナルの遮断作用ではなく、群発頭痛慢性化に関与する神経回路に作用することで治療効果を発揮していると推測される。また、電極をオフにしても改善効果が持続して認められた症例もあったため、群発頭痛の自然経過を改善させる効果もあることが推察された。