日本頭痛学会

HOME << 医師・医療従事者の方へ << 頭痛研究のトピックス

理事長挨拶
topics&information
ニュースレター
学会概要・組織
入会案内
頭痛学会誌
頭痛ガイドライン
国際頭痛分類
医師・医療従事者の方へ
会員専用ページ
一般の方へ
研修医・医学生へ
Link
サイトマップ
PRRT2遺伝子変異は片麻痺性片頭痛の原因となる

Riant F, et al. PRRT2 mutations cause hemiplegic migraine. Neurology 2012;79:2122-2124

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】
片麻痺性片頭痛 (hemiplegic migraine: HM)はほとんどの症例で20歳前に発症し、家族歴を有する症例と明らかな家族歴を欠く孤発例に分類される。その原因遺伝子としては、CACNA1A ・ATP1A2・SCN1Aの3つが知られているが、これらの遺伝子の異常のみでは全症例をカバーできないことが知られている。PRRT2遺伝子変異は、発作性運動誘発性ジスキネジア・良性家族性新生児性てんかん・舞踏アテトーシスを伴う新生児性けいれんなどの小児発症の発作性疾患において同定されている。本研究では、PRRT2遺伝子変異がHMの原因となることを報告している。


【方法・結果】

20歳前発症のHM症例101例 (全員がコーカシア)を対象とした。対象となった症例では、CACNA1A ・ATP1A2・SCN1Aの3つの遺伝子に変異を有さないことが確認済みであった。遺伝子解析は、3つのコーディングエクソンとそれを挟むイントロンのPCR産物をシークエンスして行った。その結果、4人の患者でPRRT2遺伝子変異が確認された。2人では、c.649dupC/p.Arg217ProfsX8変異が確認されたが、これは発作性運動誘発性ジスキネジア症例でも同定されている変異であった。残りの2人では、c.649delC/p.Arg217GlufsX12変異が確認され、これは新規変異であった。両変異ともにストップコドンとなり、遺伝子産物は野生型よりも短いものが産生されることが予測された。また、これらの変異はデータベースなどから得られた対照遺伝子では認められなかった。変異の見つかった4症例とその係累で発症している2症例の臨床像を解析したところ、2症例ではHM発症前に典型的な前兆のある片頭痛を呈していたことが明らかとなった。また、いずれの症例でも小脳失調は認められなかった。1名の患者では、発作性運動誘発性ジスキネジアと全身性てんかん発作が確認された。

 

【考察】

今回新たな遺伝子の変異によってHMが発症することが明らかとなったが、同じ遺伝子変異がなぜ異なった表現型 (片麻痺性片頭痛あるいは発作性運動誘発性ジスキネジア)を引き起こすのかは不明である。なお、てんかんとHMの合併はSCN1A変異などでも報告されており、両疾患が共通の病態を有していることは従来から示唆されている。PRRT2遺伝子産物の機能に関しては、SNAP25 (synaptosomal-associated protein 25 kDa)と相互作用する蛋白質であることが示唆されている。SNAP25はシナプスに存在するQ-SNARE蛋白質であり、エキソサイトーシスや神経伝達物質の放出に関与する。これらの機構の異常によってシナプスに局在するチャネルの機能に変化が生じてHMが生じるのではないかと推察される。