日本頭痛学会

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スイスで施行された30年間にわたる一次性頭痛の症状に関する縦断研究

Merikangas KR, et al. Magnitude, impact, and stability of primary headache subtypes: 30 year prospective Swiss cohort study. BMJ 2011;345:d5076doi: 10.1136/bmj.d5076.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】
 一次性頭痛の重症度・生活への支障度に関する横断研究の報告は数多いものの、長期の縦断研究は少なく、数十年にわたってコホートを追跡して頭痛症状の変動性を観察した研究はこれまでなかった。本研究では、ICHD-2の診断基準に則って30年間にわたり頭痛症状の変動性を検討している。


【方法】

 Zurich Cohort Studyは1978年に開始され、ZurichのCanton地区の住民4547人 (男性2201人・女性2346人)からなるコホートであった。当時、男性参加者の年齢は19歳で、女性参加者は20歳であった。面談対象になったのはこのうちの591人 (男性292人・女性299人)であった。なお、本研究は元来精神疾患の疫学研究として組織されたため、面談対象者の2/3はスクリーニングテストによって精神疾患の素因を持っている可能性の高いものが選ばれている。その後の面談は、21 (20), 23 (22), 28 (27), 30 (29), 35 (34), 41 (40), 50 (49)歳時に行われた (カッコ内は男性)。30年間にわたり全ての面談が施行し得た者は全体の43%であり、6回施行し得たのは55%、5回施行し得たのは66%であった。面談における質問内容によって、ICHD-2の前兆のある片頭痛 (MA)・前兆のない片頭痛 (MO)・緊張型頭痛 (TTH)の診断基準の内容はカバーされていたが、面談時に一般診察や神経学的診察は行われなかったため、二次性頭痛の可能性は完全には除外されていなかった。

 

【結果】

 MAの1年間あたりの有病率は平均で0.9%であり、総有病率は3.0%であった (女性3.9%・男性2.1%)。また、MOの加重有病率は8.3%~14.8%であった (平均10.1%)。MOの総有病率は36.0%であり、女性と男性でそれぞれ50.7%と20.7%であった。TTHの生涯累積有病率は29.3%で、1年間あたりの有病率は5.7%~19.4%であった (中間値は8.5%)。また、連日性頭痛を呈する者の有病率は約1%であった。MOの有病率は時間が経過すると共に低下する傾向を示した。一方、TTHの有病率は20歳代と30歳代で増加する傾向を示し、40歳時にピークに達した。TTHが男性に多い一方で、前兆の有無に関わらず片頭痛 (MIG)は女性に多かった。頭痛による病悩の程度・仕事への支障度・症状のある年数などはMIG患者でTTH患者より大であった。MAでは、66%において何らかの治療を受けており、43%が医師を受診していた。一方、MOでは、それぞれの割合は57%と36%であった。TTHでは、それらの割合はMIGに比較して低かった。薬の使用に関しては、処方薬を用いていた患者は、MAで39.5%であったのに比較して、MOで27.3%、TTHではわずかに8.5%であった。30年間の面談においてMIGあるいはTTHを認めた全ての患者に関して、頭痛のサブタイプを解析したところ、MOのみ認めた者は24.6%、MO+TTHを認めた者は31.5%、MO+MA+TTHを認めた者は2.0%であった。TTHのみ呈した者は36.4%であった。また、MAと診断された患者の90%以上はMOも認めていた。調査中に4回以上面談が可能であった者を対象に頭痛症状の変動性が検討された。経過中1回以上MIGと診断された者を抽出し、全ての面談の中で何回同一の頭痛を呈していたかを解析したところ、49%が1回、16%が2回、15%が3回、21%が4回以上であった。MAに注目すると、62%の患者は1回のみしか合致せず、2回の合致が20%で、3回の合致は17%、4回以上はわずかに1.3%であった。なお、1979、1981、1986年のいずれかの面談時にMIGと診断された中で69%の患者は、その後、単独であるいは他の頭痛を合併しながらMIGを呈し続けていた。また、19%の患者は、その後TTHしか呈していなかった。一方、当初TTHと診断された患者の中で22%は、その後TTHを呈さずにMIGを呈していた。さらに、調査当初に頭痛を呈していて、その後頭痛が消失した者の数は、MIGに比較してTTHで約2倍多かった。

 

【結論】

 MIGはTTHに比較して、生活や仕事への支障度が大きく、医師の治療を受ける頻度も高かった。一方、長期的に頭痛症状を観察すると、MIG患者とTTH患者共に症状のパターンが大きく変動する傾向が明らかとなった。