国際頭痛分類第3版(ICHD-III)beta版の発表について


平成25年7月16日

国際頭痛分類第3版(ICHD-III)beta版の発表について

 

 この度、国際頭痛学会誌 Cephalalgia 2013年7月号に国際頭痛分類第3版(ICHD-III)のbeta版が発表された1, 2。1998年に初版、2004年に第2版が発表された後、これまで数回の修正が行われてきたが、今回で3回目の大改訂となる。
 ICHD-IIIについては先のHeadache Master School 2013でも紹介されたが、 2013年6月27日から30日にかけて、アメリカ・ボストンで開催された国際頭痛学会でも特別企画として取り上げられた。それぞれ片頭痛、その他の一次性頭痛、二次性頭痛について概説されたが、今回はその主な変更点について解説する。
 片頭痛については、近年注目されている慢性片頭痛が片頭痛の合併症から一つのサブタイプとして再分類された。また遺伝子型の解明が進められている家族性片麻痺性片頭痛がその遺伝子別に細分化されている。脳底型片頭痛が削除され、Migraine with brainstem auraとして前兆のある片頭痛の一つに組み込まれた。新たにEpisodic syndromes that may be associated with migraineが追加となり、これまでの小児周期性症候群が削除され周期性嘔吐症、腹部片頭痛がこの中に再編され、またBenign paroxysmal vertigoとBenign paroxysmal torticollisが新たに加えられた。
 その他の一次性頭痛では、片側性頭痛で自律神経症状を伴う持続性片側頭痛が、群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛のサブタイプとして編入されている。また第3部に分類されていた外的圧迫による頭痛、寒冷刺激による頭痛および付録であった貨幣状頭痛がその他の一次性頭痛に編入された。新規発症持続性連日性頭痛は診断基準の変更があり、痛みの局在や性質、強度、随伴症状などの項目が削除され、発症が明瞭で持続性の頭痛が3ヶ月以上続くものと簡素化された。
 二次性頭痛については、今回診断基準が大幅に改定されており、これまでは原因疾患の治癒もしくは回復により頭痛が改善することが確定診断のための要件であったが、実地臨床では現実的ではなかったため、@頭痛が原因疾患の発症と同時期に生じた、A原因疾患の悪化もしくは改善に伴い頭痛も変化する、Bその原因疾患に特異的な頭痛である、Cその他の根拠がある、のうち二つを満たすことで確定診断を行うことが可能とされた。また、その他の頭蓋内血管障害による頭痛のサブタイプとして新たに可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛が加わり、ホメオスターシスの障害による頭痛に、これまでその存在が知られてはいたもののICHD-IIでは分類されていなかったAeroplane travel headacheが加わった。
 付録にも新たに各種頭痛が追加されているが、片頭痛関連では前庭神経症状に片頭痛症状を伴うものとしてVestibular migraineが追加されている。また将来を見越してか、Headache attributed to travel in spaceが加わっていることも興味深い。
現在、世界保健機関(WHO)が国際疾病分類第II版(ICD-II)を草案として発表し、2015年の大改訂に向けて実地試験を行なっている。ICHD-IIIもこのICD-IIと整合性を持たせることで利便性をより高めることができると考えられ、今後2-3年はICHD-III beta版として実地試験を行い、内容に対してコメントなどがあればフィードバックを行い改善を図って行く予定である2。しかしながら、今後大きな変更はおそらくなされないと予想され、頭痛診療の新たな標準化のため、早期にICDH-IIIを診療に取り入れていくことが重要である。そのためにも、わが国でも早急に翻訳作業を行い、 専門医はもちろん非専門医においても同様に広くICHD-IIIを普及させることが必要である。

1.Society, H.C.C.o.t.I.H. The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (beta version). Cephalalgia 33, 629-808 (2013).
2.Olesen, J. ICHD-3 beta is published. Use it immediately. Cephalalgia 33, 627-628 (2013).

国際頭痛学会Webサイトより全文のダウンロードが可能(要IHS会員ID・PW):
http://www.ihs-headache.org/