第4章 片頭痛の予防療法

 

1 . どのような場合に片頭痛の予防療法が必要なのでしょうか


推奨 :
  片頭痛発作が月に 2 回以上ある方には,片頭痛の予防療法を検討していただくとよいでしょう.急性期治療のみでは片頭痛による日常生活の支障が残る場合,急性期治療薬が使用できない場合にも予防療法を行うよう勧められます ( 推奨のグレードB ) .

解説 :
片頭痛予防療法はつぎのようなメリットがあります.
1) 発作の頻度,重症度,頭痛持続時間を減らします
2) 急性期治療の効果をよくします
3 )生活への支障を軽減させることにより,生活機能が向上します
  急性期治療薬の乱用は薬剤乱用性頭痛を誘発しますので,急性期治療薬ののみすぎがある場合も予防療法が必要です.高血圧や抑うつ状態などの併存症がある場合には併存症にも有効な片頭痛予防効薬を使用します.



2 . 予防療法にはどのような薬剤があるのですか


推奨 :
  片頭痛の予防療法に使用される薬剤にはβ遮断薬,カルシウム拮抗薬,抗てんかん薬,抗うつ薬などがあります.これらの片頭痛の予防効果のある薬剤のうち,片頭痛の予防薬として本邦で保険適用があるのは塩酸ロメリジンです ( 推奨のグレードB ) .
( ★五十嵐先生御意見により訂正 )

解説 :
  各種予防薬について説明します.

●β遮断薬(プロプラノロールなど)
46 以上の試験が行われており,片頭痛予防薬としての効果は確実とされております ( 推奨のグレード A ) .β 遮断薬は高血圧や冠動脈疾患,頻拍性不整脈などの合併症を持つ片頭痛患者にとくに勧められます.逆に心不全や喘息,抑うつ状態の場合は使用を遠慮します.なおβ遮断薬は片頭痛への保険適用はありません.

●カルシウム拮抗薬
  降圧薬として広く使用されている薬剤群で,片頭痛予防薬として以前より使用されてきました.塩酸ロメリジンは本邦で開発された片頭痛予防の保険適用をもつ安全な薬剤です.塩酸ロメリジンは月に2回以上の発作がある片頭痛患者に 10 r / 日,経口投与すると,8週間後には 64 %の患者で片頭痛発作の頻度,程度の軽減が期待できます ( 推奨のグレードB ) .

●アンギオテンシン変換酵素( ACE )阻害薬,アンギオテンシンU受容体遮断薬( ARB )
ACE 阻害薬と ARB は副作用の少ない降圧薬として広く使用されております.高血圧の治療のために ACE 阻害薬を服用した患者において片頭痛の頻度や程度が軽減が認められました.とくにリシノプリルやエナラプリルに片頭痛予防効果のエビデンスがあります. ARB であるカンデサルタンにも無作為化試験が実施され有用性が示されております.片頭痛と高血圧症が併存する場合,これらの薬剤の積極的な使用が勧められます ( 推奨のグレードB ) .

●抗てんかん薬(バルプロ酸)
  月に2回以上の頭痛発作がある片頭痛患者にバルプロ酸 1000mg を経口投与すると,8週後には片頭痛発作を平均 4.4 回 / 月から平均 3.2 回 / 月に減少することが期待されます.バルプロ酸は神経細胞の興奮性を抑制することから,片頭痛や難治性頭痛において検討がなされてきました.外国ではバルプロ酸以外の抗てんかん薬も片頭痛予防薬として使用されています.

●抗うつ薬(アミトリプチリン)
  抗うつ薬は抑うつ状態がなくとも,片頭痛に関係の深いセロトニンの代謝を改善することにより片頭痛の予防に有用であす.とくに緊張型頭痛を合併している片頭痛に高い有効率を示されております.抗うつ薬の中では三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンはエビデンスも十分にあり,広く使用されております.三環系抗うつ薬は,抗コリン作用による副作用(眠気,口渇等)がありますが,低用量から用いることにより副作用を軽減できます.新しいタイプの抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) は三環系抗うつ薬にみられやすい副作用は少ないのですが,今後のエビデンスの蓄積が期待される薬剤です.



3 . 複数の予防療法をどのように使いわけるのでしょうか


推奨 :
予防療法の選択は,エビデンスがあり,有害事象が少ない薬剤を低用量から開始します.十分量で 2 〜 3 ヵ月程度の期間をかけて効果を判定します.それでも効果が得られなければ,他の薬剤に変更します.片頭痛以外の併存する疾患や身体的状況も勘案して薬剤を選択します ( 推奨のグレードB ) .

解説 :
  予防療法の評価には,頭痛の性状や持続の観察,急性期治療薬の使用量の記録が有用です.それには頭痛日記ダイアリーをつけるとよいでしょう.頭痛日数の記録だけでもかなり役立ちます.米国内科学会のガイドラインでは,片頭痛予防の第一選択として,降圧薬のプロプラノロール,抗うつ薬のアミトリプチリン, 抗てんかん薬のバルプロ酸ナトリウムを推奨しております.本邦においては保険適用をもつ塩酸ロメリジンが選択薬となります.



4 . 予防療法はいつまで続ける必要があるのでしょうか


推奨 :
予防療法の効果判定には少なくとも2ヵ月を要します.問題がなければ 3〜6ヵ月は予防療法を継続し,片頭痛のコントロールが良好になれば,予防療法薬を徐々に減らしていき,可能であれば中止します ( 推奨のグレードB ) .

解説 :
  予防療法の継続期間や中止を考える目安は,頭痛による支障度にもよります.一律には決めることができませんが,多くのガイドラインでは予防療法を最低3ヵ月は継続し,頭痛が月に 1,2 回以下が2ヵ月以上続くようになれば,徐々に減らして中止することを勧めております.



5 . 片頭痛の予防によいサプリメントにはどのようなものがありますか


推奨 :
マグネシウム,ビタミン B2 ,フィーバーフューは,ある程度の片頭痛予防効果が期待できます.これらの薬剤の副作用には重篤なものはみられず,また安価であることから片頭痛予防薬の選択肢として考慮してもよいでしょう ( 推奨のグレードB ) .

解説 :
  自然食品やサプリメントとして使用されているものに片頭痛予防効果が示唆されているものがあり,マグネシウム,ビタミン B2 ,フィーバーフューがその代表です.処方薬による予防療法を希望なさらない場合には試みてもよいでしょう.

●ビタミン B2
  片頭痛患者にはミトコンドリア機能の障害があるという仮説から,ビタミン B2 400mg をプラセボ ( 偽薬 ) と比較した試験によりビタミン B2 の有効性が確認されました(推奨グレードB).ビタミン B2 は 400mg という大量ではなく, 25mg の少量でも片頭痛予防効果があるという研究もあります.

●フィーバーフュー
  ハーブの一種で,古くから片頭痛予防に用いられてきました.無作為化比較試験が3報あり有効性が認めせれております.副作用はほとんどありません.ただし子宮収縮作用があるので,妊婦は避けてください.
★竹島先生御意見により訂正 でしょうか.

●マグネシウム
  マグネシウムは神経の働きを安定化させる作用があります.4つの論文があり3編が有効性を認めております.一日 300 〜 600mg を摂取しますが,もともとマグネシウムは緩下剤として用いられておりますので,服用により下痢を起こすことがあります.

●サイドメモ :
○ボツリヌス毒素
  ボツリヌス毒素の注射は顔面痙攣などの治療に用いられている薬剤です.片頭痛に対しても試用されており,有効との報告も多いのですが,まだエビデンスは確立していません.また日本では保険適用がありません.ボツリヌス毒素が片頭痛治療に標準的に用いられるか否かは今後の課題です.